「そう……一八〇センチ以上あるの」
でてきた数人の男は前方の横断歩道を渡り反対の歩道を歩いてゆく。歩いてくる男性たちが海上保安庁の男性であれば、その方向にドックハウスがあると恵利子は考えていた。その男たちの行く方向を見ていたが、背中におおきな白字で海上保安庁と書かれているのを見た。
「裕子さん、いまの男性たちは海上保安庁の男性だわ。背中に海上保安庁とおおきく書かれているわ」
すぐにふり返りその男たちを見る裕子だった。
「ほんとうだ。白くはっきりと書いている。この作業服を着ているのは海上保安庁の男性だわ。つなぎの作業服とはねえ。よく似あっているのと違う?」
ふたりはこの作業服を注意して見ていた。
「もうすぐその男性が来そうな感じだわ」
数分後におおきな男性とすこし背が低い男性が正門からでてきた。おおきな男性もちいさい男性も黄色のヘルメットを脱いで手に持っている。白いタオルを首に巻いている。
「恵利子さん、いまでてくる男性は違うかしら。ここから見えるだけでもかなりおおきいわ」
「そうね。あのくらいあったように思うわ」
胸の鼓動がさらに激しくなる恵利子。双眼鏡を取りだす裕子だった。すぐに覗きこみ、その方向に双眼鏡をあてる。しばらくして裕子が言った。
「すてきな感じの男性に見えるわ。この男性ですか?」
裕子から双眼鏡を借り、手にする……恐る恐る覗く。
「まちがいはないわ。裕子さんこの男性にまちがいはない」
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