⚫ぼんくら外交官のつぶやき⚫
こちらに来る前に韓国の二大都市(ソウル、釜山)で約十二年間勤務し、数多くの酒席に出てきたが、ほとんどの韓国人は目上の人の前では相手の正面で杯を空けたりしない(顔を横に向けて杯を飲み干す)し、コップに酒が少しでも残っている場合には注ぎ足すことはなかった。
ところが、北朝鮮ではそのようなしぐさを見たことはなかった。何だか日本で飲んでいるような安堵感があった。たばこを吸うときも同じような南北の違いが見られた。
社会主義社会は儒教の思想を受け入れないようだ。
八月二十八日(金) 晴
旅客列車は十三両
KOKの庭(通路)からは、少し遠いけれど列車の通るのがよく見えるし、通過する音もよく聞こえる。一時電力不足で止まっていたとかいう噂もあったが、最近は定期的に動いているようだ。
それでも昼間は三、四便程度。昨日の午後、外に出て列車の車両数を数えてみたら十三両だった。客は多かったし、後ろの三両は荷物車だった。
八月二十九日(土) 晴
想像以上に走っている日本車
GB副局長用の公用車(ナンバープレートは平壌となっている)は、今日はいつも乗っている赤いベンツではなく白の日本製の車(車種は不明、二〇〇〇CCくらい)であった。
この他にもいろんなところで、右ハンドルの明らかに日本から持ってきたと思われる車をよく見かける。帰国同胞が持って帰ったものなのだろう。(注)北朝鮮では車は右側通行(韓国と同じ)。
港の中は記念碑とスローガンでいっぱい
陽化(ヤンファ)港の接岸埠頭には、故金日成(キムイルソン)主席の来訪時に指示を伝える記念碑(港の中で一番立派な建造物)やその教示を守り抜こうというようなスローガンで満ちあふれている。
その記念碑の後ろにまた一つ小さな碑ができたようだ。その碑の除幕式が明日午後四時から行われるという。もちろん荷役作業は式の間は中断すべしとの要請が来ている。これに協力せざるを得ない。
第二章 一九九八年 秋
九月一日(火) 雨のち曇りのち晴
北朝鮮の「ミサイル」発射実験
突然の驚きのニュースだった。
NHK衛星第二テレビの朝七時、ニュースがトップで北朝鮮がミサイルを発射し三陸沖に着弾したということを十七分の特集を組んで放送した。皆が朝食時にこの報道を話題にしていた。
李(イ)代表は、金正日(キムジョンイル)が軍人国家で軍を掌握していない証左との見方をしている。日本は本格的工事に関する資金拠出協定への署名を延期した。韓国、米国はわからない。
韓国人労働者の労務管理(手当てを増やす)も兼ねて夜間作業を開始した矢先に悪いニュースだ。
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