「すみません。表の看板を見てきました」
すると、奥から店長らしい女性が出てきた。
「あら、2人で申し込んでくれるの?」
「あの~、僕たち2人ともパンは作ったことないんです。でも、教えてもらったら一生懸命働きます。ダメでしょうか」
女性は、じっと2人のことを観察していた。ぽろもきは訴えるような真剣な眼差しで見ていた。のとは少し下を向きながらも、願いを込めた表情をしていた。
少し経って、女性はよし決まったという表情をして、
「あたし1人でこのお店を始めたんだけれど、やっぱり1人で全部のことをすると大変なのよ。パンのこね方も焼き方も教えるから2人とも大歓迎だよ」と言ってくれた。
「それにねえ、洗い物や焼けたパンを並べる作業、お客さんに売る仕事とか、他にも仕事はいっぱいあるんだよ」
「ありがとうございます」
2人は声を揃えて笑顔でお礼を言うと、自己紹介をした。
「のとちゃんと、ぽろもきくんだね。あたしの名前は“カーティム”っていうんだよ。よろしくね」
「カーティム店長さんですね」
のとが言うと、
「“店長”はいらないよ」とカーティムは短く笑った。
「わかりました。じゃあ、カーティムさん。よろしくお願いします」

【イチオシ記事】ずぶ濡れのまま仁王立ちしている少女――「しずく」…今にも消えそうな声でそう少女は言った
【注目記事】マッチングアプリで出会った男性と初めてのデート。食事が終わったタイミングで「じゃあ行こうか。部屋を取ってある」と言われ…
【人気記事】「また明日も来るからね」と、握っていた夫の手を離した…。その日が、最後の日になった。面会を始めて4日目のことだった。