女性パート従業員の広末さんは145cmほどの小柄な女性で少し障害があるから洗い場専属で頑張ってくれている。

「いつも大変な洗い場ばかりで骨が折れるやろぉ、広末さんごめんやでぇ」とキヨが広末さんにねぎらいの言葉をかける。

「大奥さん、私大丈夫やよぉ」と広末さんはいつもニコニコ笑って返してくれる。

「大変な仕事を嫌な顔ひとつせんと本当に広末さんは偉い人やなぁ。適材適所とはこのことや。広末さんには頭が上がらんわ」とキヨはいつも感心している。

料理店厨房角のパーテーションで仕切った小さな事務所にいる下川さんは、東京の有名な大学を出て経理事務を担当してくれている。すごく電話の対応が丁寧でお客さんに好評だ。午前中の忙しい厨房の盛り付けも手伝ってくれてよく気が付く人だ。

父ハルは休憩時間に四季報で上場企業の動向を調べ株相場のテレビを見て勉強し、時々株に投資をする。

「下川さん、好調な株があるから俺は買うけど一緒にどうやぁ。みんなで買ったら上がるでぇ」と、上がりそうな株があると必ず事務の下川さんに声をかける。

下川さんは株投資でお小遣いが少しくらい増やせたらラッキーくらいに思っていて、ハルと一緒に少額の株投資をする。下川さんは欲を出し過ぎないので一度も損をしたことがない。だからハルの投資話を楽しみにしているくらいだ。

当のハルは欲を出して大儲けすることもあるが、たまに大損をしてトモの顔色が悪くなることもある。それでも忙しいハルのわずかな時間の楽しみだった。

  

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