少女は自分が第一発見者で電話したと証言、発信履歴を確認するもその後に消息不明。そう殴り書きのような字で記されていた。
「これは偶然か? 今朝の現場の状況と十三年前に描かれた絵は酷似している。この鳥谷が会ったという第一発見者の少女の行方は?」
「いえ我々も捜査していますが、依然として特定には至っておりません。付近に防犯カメラはありませんし、これといった有力な目撃証言もありません。補導歴や失踪届などもありませんし、この少女の存在自体も怪しいものと踏んで」
「鳥谷が見間違えるはずはない。この赤いコートの少女は必ずいるはずだ。徒歩の移動であれば藤山近郊に住む家庭に限られる。周囲五キロ圏内を絞って探せ」
「もう調べています。該当する住居は百二件です」
「そこから子どもがいる家庭を絞り込め、住民票、戸籍謄本なんでもいい」
「四十三件です」
「小学低学年の女の子がいる家庭は?」
「五件です。しかし木嶋さん、この該当する住宅には正午すぎに、捜査員がすでに聞き込みを行っておりまして」
「親の知らぬまに子どもが抜け出している可能性や、親が家を留守にしていたことを隠匿している可能性もある。子どもの顔写真を撮って鳥谷に確認させれば済む話だ」
「しかしプライバシーの問題もありますし、撮影は」
木嶋は大きく舌打ちをして五件の聞き込みの調書をテーブルに並べた。腕を組みながら舐めるように見つめていた。それぞれの行動記録や聞き込みの内容が記されている紙は数枚にも及んでいた。
【前回の記事を読む】被害者が描いた十三年前の卒業制作の絵は、彼女が発見された状況とほぼ一致していた…
次回更新は2月23日(日)、21時の予定です。
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