この直後、私は看護師の藤戸さんから一通のメッセージを受け取った。
本人ミーティング(仮称)のお誘い、Nothing about us without us(私たちのことを私たち抜きに決めないで)
二〇〇二年イギリスのスコットランドに住むひとりの男性の声から認知症のひと同士で集まり話し合う場である「認知症ワーキンググループ」が発足されました。
その声は日本にも広がり、日本認知症ワーキンググループとして、当事者の方たちの声が少しずつ世の中の風潮を変えてきました(二〇二三年 共生社会の実現を推進するための認知症基本法案の成立など)。
「認知症になってからも、希望と尊厳を持って暮らし続けることができ、よりよく生きていける社会を創り出していこう」
これは認知症の有無に限らず、いまこのホームで生活するご入居者様ひとりひとりにも言えることだと思います。
ご本人たちの声は世界を変えていくことができると思います。このホームがよりよく生きる場であり、終の棲として人生のどのステージにおいてもご自身の希望と尊厳が守られていると安心して生活しつづけることのできる場にしていけるよう力をかしていただけないでしょうか?
月に一~二回、ご入居者様と職員で集まり話し合う場を設けたいと思います。今のホームに抱いているお気持ち、どういった生活をしたいか、などざっくばらんにお話ししてください。
お一人お一人のお話を伺い、より良いホームのあり方になるよう考えていきたいと思います。
体力も気力も落ちてきている私だが、彼女のこの呼びかけにもうひとふんばりしようと決意せざるを得ない気になったのである。
老人ホームの質の底上げになる。そしてそれがこのホームにとどまらず広がっていくことへの期待だった。なによりさらに老いが進んだ時のこの私自身のために他ならない。
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