3 課題
「ねぇ、ノート。美亜(みあ)ちゃんにお願いできないかなぁ?」
ノート取りなら坂口(さかぐち)美亜という同級生がうまいと評判だった。あずみは、美亜とは同じ高校から大学に進学していて、何度かノートを見せてもらったことがある。
「そうだね。美亜ちゃんなら適任だわ」
あずみはそう答えて、多少面識のある坂口美亜に自分からお願いしてみると言った。
真琴も課題の方向性が見えてきたことで、気持ちが上向いてきたらしい。
「ねぇ。朝から出掛けていて朝食全然食べてないの。Aランチじゃ足りないから、チーズケーキセットも頼んでいいかな?」
あずみは、まだこの期に及んで食欲があるのかと半分あきれながらも、いいよ、と答えて中庭を見た。
朝方積もっていた雪は、日が差してきてからすっかり融(と)けていた―。
「それで、結局ふたつの火事は、関連性があるとみて捜査することになったの?」
あずみはその日、夜遅く帰ってきた啓介に今朝の火事のことを聞いてみた。
「それはどうだろうな。今回は明らかな放火だし前回は本人の失火だしな。今のところ関連性は薄いんじゃないか」
啓介としても、帰ったら何か聞かれるだろうと覚悟はしていたようだ。一般的な意見としてなら言ってもいいだろうとあずみにせがまれて、啓介も仕方なく答えた。
「やっぱり……」
警察としても、前回の火事と今回の火事とは、たまたま偶然同じ団地内だったという見解で見ているのだ。