紅の脈絡

「あら?」

ゆきが、絵の中に何か見つけたらしく、千鶴に尋ねた。

「あの、妹さま……」

「千鶴でいいわよ。なあに、ゆきさん」

「この花は、変わっていますねえ。葉っぱが翼の形をしてる。色も水色だし。今にも羽ばたきそうな。何という花なんです?」

「ああ、これ。『レイギッガアの翼』っていうの。ほら、わたくしの帽子にも二輪」千鶴の帽子には、「レイギッガアの翼」を模した木彫りらしい飾りがついていた。

「れい……ぎ……。さっきもお話に出ましたけど、どういう字を書くんです?」

「ええと……、ひらがな……?」千鶴は兄を見上げた。

「えっ、何だい?」

現実に引き戻された竜興が、慌てて聞き直した。

「やだ、お兄さま。考え事? あのね、『レイギッガアの翼』のレイギッガアってどういう字を書くのって、ゆきさんに聞かれたの。ひらがな、よね?」

「違うよ」

竜興はいつもの笑顔に戻った。

「カタカナだよ。外来語だからね」

「ですって」

と千鶴が照れ隠しにお道化た調子で訂正した。