「栞、今日はわざわざありがとうね。せっかく来てくれたのにまだゆっくり話せてないし二次会に来ない? すぐ近くでこの後カラオケ予約してあるんだ」
新婦の奈津子は普段は控えめなおっとりとしたタイプだが、大きく背中のあいたカクテルドレスを堂々と着こなして、その美しさに栞がたじろぐほどだ。
「うん、ありがとう。カラオケ楽しそうだけど、御馳走を食べ過ぎちゃったみたいなの。かっこ悪いけどお腹が痛くて」
「大丈夫? そんなに細いからだよ。栞、いつもちゃんと食べてるの?」
晴れの日を迎えた新婦の奈津子を心配させてしまったことが恥ずかしくて、栞は胸が痛んだ。
「うん、大丈夫、大丈夫。今日はこれで帰るね、ごめんね。でもまた時間作って二人でゆっくり会おうよ」
本当にお腹が痛くて、重くて、立っているのがやっとの有様だったのだ。食べ過ぎてお腹が痛い、恥ずかしくても隠さずに言うことが一番この場から早く解放される方法だと栞は考えた。
これまでに経験のない痛みだった。
会社には連絡を入れて休みをもらい、栞は翌日、病院に行くことにした。ただの食べ過ぎによる腹痛にしてはいつまでも治まらなかったので、検査を受けることになった。