陣痛中もひどい吐き気で水しか受けつけなかった。
そして23時間の陣痛に耐え、息子が元気に生まれてきてくれた。
でも本当に不思議なもので、息子の泣き声や息子の顔を見て、抱っこできた時。
陣痛の痛みも、今までの自分のひどい人生さえもすべてがどうでもよく思えるほど、
初めて体感する、味わったことのない喜びと幸福感で胸がいっぱいになった。
しかし、実際子育てを始めてみると、喜びや感動だけで終わることのない、子育ての厳しい現実が待っていた。
息子は、本当に夜中によく起きる子で、昼寝の時も少しの物音で起きて泣き出してしまう。
それに加え、2時間おきの授乳におむつ替え。
一歳を過ぎると更に夜泣きはひどくなっていき、産んでからずっと、24時間スタンバイ状態の私は、本当に疲れ切っていた。
一樹は、朝家を出るのが早く、帰りは20時以降のことが多かった。
私の父と母は手助けする気もなく、一樹のお母さんは認知症の姑の介護と、透析が必要で持病がある一樹のお父さん、二人の介護に追われているのを知っていたから、もちろん頼ることはできず、地元を離れて結婚したので近くに友人もいない中でのワンオペ育児だった。
休める時間など本当になかった。
私たちの場合、どちらの両親にも頼れなかったので一樹と二人で力を合わせた。子どもを育てるとは、こんなにも大変なのか……と身をもって知った。
唯一の救いは、毎日続く夜泣きに、一樹が毎晩一緒に付き合ってくれたことだ。
休日は、家事や子育ても積極的にしてくれたし、仕事もあるのに、毎晩の夜泣きで寝不足だったはずなのに、常に一樹からは〈一緒に育てよう〉という気持ちが感じられた。
私に「いつもありがとう。お疲れさま」という言葉をくれ、そんな一樹とだったから私はなんとか踏ん張れた。
息子を妊娠した時に決意したこと。
―私のような思いはさせない―という気持ちはブレることはなかった。
だからだろうか。