第一部

風俗依存

ついに一樹にこの仕事がバレて止められそのお店を辞めても、また不安になり隠れて仕事をするようになった。

一樹を裏切りたくない。悲しませたくない。そう思っているのに当時の私にはそれがこの衝動を制止し切れる材料にはなれなかった。

今振り返ると、一種の依存。風俗依存だったのだと思う。

父も母も、この仕事をしていることを知っていたが、父は自殺未遂を繰り返されるよりはマシかという感じで特に止めもしなかった。母には、私の仕事の愚痴を聞いてもらっていたが「私にはそういう仕事はできないなぁ」と他人事で、今思えば私は両親に止めてほしかったのかもしれない。

「どんな理由であっても娘がそんな仕事をしていたら悲しいし辛い」など、なんでもよかった。そのような言葉をくれないことで、より自分の存在価値というものに躍起になっていたのかもしれない。

あと、男性の欲によって傷つけられた(りょうくんとの出来事)も関係があり、彼に恨みをぶつけられないのなら、それを逆手にとり男の欲から稼げるだけ稼いでやろうという、私なりの歪な復讐の仕方だったのだ。

そんな複雑な感情が入り交じり、いろんな理由も重なり、一樹を裏切りたくないという思いだけでは、踏みとどまれなかった。

こんな私でも、どうして一樹は別れず、私を責めずそばに居続けてくれたのだろう。依存の理由も生い立ちや状況から想像がついていたとしても、普通は耐えられず別れを選ぶと思うのに……一樹は選ばなかった。

「薫はどうして、自分で自分の価値を下げようとするの?」と言われた。今ならその言葉の意味が理解できる。

けれど、今になってその言葉の重みや一樹の想いの深さを知って後悔しても、遅すぎた。しかし、出口が見えそうにない風俗依存から抜け出せたのは、意外にも結婚がキッカケだった。