結婚

私は27歳になり、自分が淡く抱いていた人生設計みたいなものをふと思い出した。

もしも私が結婚をするという前提で人生を考えた時、漠然と30歳までに子どもを一人は産みたい。そして、30代半ばまでに二人目を授かるのが理想だと思っていた。

子どもを授かることに関して期待通りにいくかは分からないけれど、理想と淡い願望があった。そして、こんな私が結婚をするとしたら一樹しか考えられなかった。

期待と不安を抱きつつ、一樹がずっと「そろそろ一緒に暮らそう」と話していたのを聞き流し返答を曖昧にしてきた数年だった。私自身、結婚はもちろん子どもを育てることは可能なのか。きっと周囲の誰もがそう思っていただろう。まずは思い切って、一樹と一緒に暮らしてみようと決意した。

完全に一緒に暮らしてしまえば、風俗依存から抜け出せるキッカケになるかもしれないと思い、アパートを探し、私たちは一緒に暮らし始めた。もちろん、この同棲の意味をわざわざ言葉にして一樹は言わないが、それは《結婚》を前提としたものなのだということは漠然と分かっていた。

一緒に暮らすことは、私にとっては大きな一歩だった。

暮らし始めて一年が経った頃、一樹が行きたいと言っていた北海道の旅行でまさかのプロポーズを受けた。

夜、北海道へ向かうフェリーのデッキで指輪を取り出し「何もないここから始めよう。俺と結婚してください」と言われた。

嬉しいけれど、正直言うと怖くてたまらなかった。

プロポーズを断らないということはつまり私はついに結婚をするということなのだから。

返事をするのに一瞬とても迷った。