鼠たちのカクメイ

(俺の右手!)

まっ先に確認したが、それはもうなかった。ただ手首には止血処理がしてあり、包帯が巻かれている。辺りを見回すと、自分の右手首を斬り捨てた侍が座っていた。

「あんたか」

ふん、やっぱ斬れなかったんだな。今どきの侍はみんなそうだ。助けられたことに感謝する気は毛頭なく、蔑むように鼻で笑った。意義は黙って巾着を逆さにする。少年の懐中にしのばせてあったものだ。中から数枚の小判と二朱銀が落ちて床に転がった。

「わずか七両とは俺も安く見られたものだ。さて、誰がおまえを差し向けた?」

金で雇った依頼主を質した。

「侍」

「名は言ってたか?」

「知るか」

意義は鞘に納めたままの太刀で少年の右手首をつつく。少年は呻き声を上げて払いのけようとしたが、感覚が掴めず空を切った。手首のない人生が始まっているのだ。

「そんな犠牲を払ってまで、おまえが欲しかったものは何だ?」

「……刀」

意義は小さく笑った。

「人を斬って、人を斬る道具を買うのか。根っからの人斬りだな。小僧」 

「てめえらが斬れねえから、代わりにやってやってんだろうが!」