健康や生活を脅かす夜間頻尿とどう向き合うか
4.泌尿器科でのリアルな夜間頻尿
《男性LUTS患者の通院状況》
さて、医院の治療中の定期通院患者の全体像をみてください。次に2019年7月に行った当院の調査で、図②.「当院2019年7月の男性LUTS治療症例の夜間排尿回数と年齢分布」を示します。なお、気象庁によれば、この年の7月は平均気温26.5℃とやや低く、相対湿度89%と極めて高く、日照時間が例年の70%で降水量が多めで寝苦しい時期でした。
男性LUTS(下部尿路症状)治療症例464例の夜間頻尿の状況について見ていただきます。この調査は夜間頻尿の回数判定を従来より厳密に聴取することにしました。早朝覚醒など、早朝時の排尿行動は原則7時間睡眠を基準にし、聴取にて入眠潜時、起床潜時をできるだけ除いています。
月平均での夜間排尿回数の聴取は0回から0.5回刻みで4回までを調査をしてみました。なぜなら、患者の回数は固定したものではなく、日々変動するわけで、判定を少しでも厳密にするためです。例えば1回、2回が半々であれば1.5回とします。1回の方が多ければ1回、2回が多ければ2回としました。なお、この調査は2020年1月まで継続して行っています。
患者の年齢構成と治療(内服、内服+生活指導)抵抗性の夜間排尿回数の年代的推移を示しています。男性LUTSの定期的通院患者は、70代(49%)、80代(29%)が大半を占めています。それぞれの年齢の人数と夜間排尿回数を棒グラフで示しています。
なお、50、60代は定期的通院が少なく、症状改善もあって、経過観察か不定期通院者が多いという結果で実際より少なくなっていると思っています。通院患者の85歳以上は自立生活を送る人が多くを占めていますが、付き添われて来院することもありますし、通院が長く続かないためと長期処方依頼のため実際より人数が少ないと思います。
追加ですが、2023年3月13日の時点で直近3ヶ月間の受診者を調査しました。
その中で90歳以上(最高齢99歳)の男性LUTS症例55例のうち、0〜1回9例を含め、1.5回以内は20例(36%)で、その人達は比較的元気でほとんどが自力生活であり、サルコペニアやフレイルにならず、良好な日常を送っています。まれには、さほど努力せずに優秀な膀胱に恵まれて中途覚醒があっても尿意が我慢できる人もおられます。
また、グラフの時期より3年半経過した現在の通院者数は、80代が70代と同数以上となり、81〜84歳がピークとなっています。夜間頻尿の生活指導と家庭環境改善のアドバイスを通して元気な 90歳超えが増えることを目指して、診療に励む世情になりました。