健康や生活を脅かす夜間頻尿とどう向き合うか
4.泌尿器科でのリアルな夜間頻尿
《当院の治療中の患者と、疫学調査による年齢別の夜間頻尿の割合》
「疫学調査結果と当院患者のある時期の治療成績において、年齢別の夜間頻尿の割合を比較」した図①.をみてください。
その疫学調査は日本で代表的な調査です。それは一般人を対象としたアンケート形式の集団調査であり、その38%が下部尿路症状を持つとされる集団です。
そのデータと当院が以前に学会発表した「実地医療におけるMaleLUTS*の夜間頻尿」(2018年3〜4月に通院治療した当院患者)のデータとをまず比較してみると、大変興味深い違いが確認できました。
▼ 疫学調査のデータ
図①.の実線が集団調査の結果である「夜間頻尿診療ガイドラインに記載されている疫学調査データ」から作成したグラフです。この疫学調査を見ると、男女共に年代が上がるにつれて2回、3回、4回以上が増加し、特に70代、80代は著しく増加しています。
特に男性は70代で2回以上62%、3回以上31・5%、4回以上11・3%であり、80代では2回以上83・9%、3回以上 55・9%、4回以上21・2%という結果です。
▼ 疫学調査データと当院データをグラフで比較
図①.の破線の当院データについて解説します。当院に2018年3〜4月に通院していた男性の下部尿路症状をもつ646例が対象で、その治療中に行った夜間頻尿調査の結果です。この時期は例年よりやや暖かい時期(平均気温11〜16℃)でした。
LUTS治療(内服、内服+生活指導)で定期通院中の患者の夜間回数を示しています。双方の対象者数、調査法には大きな違いがあり、単純には比較できませんが、敢えて比較検討させていただきます。
当院の治療経過では、70代が2回以上33・7%、3回以上5・6%であり、80歳代では 2回以上51・2%、3回以上の無効例が13・5%と良好な結果でした。疫学調査(実線)の結果と比べてみてください。
実線から破線への同世代間の変化を解析すると、2回以上は70代が62→33・7%、80代が83・9→51・2%と減少します。3回以上は70代が31・5→5・6%、80代が55・13→6・5%とそれぞれ激減しています。これから推定すると、当院の服薬と生活指導の治療成績がかなり有効であったことは明らかです。
さらに実線と破線の各グラフで1回以上と2回以上のグラフの開きで夜間排尿回数1回の占める割合をみると、疫学調査より当院通院者データの割合がかなり拡大しています。
また、当院世代間の破線グラフでは夜間排尿回数1回が50〜70代でみれば50代、60代>70 代ですが5割以上も占めています。80代以上では3〜4割となって効果が少し減り、治療に抵抗性が出てきています。疫学調査の世代間グラフの開きよりさらに拡大しており、当院の成績効果が良好であったことを示しています。
また、夜間排尿回数0回の占める割合については、疫学調査と当院データとの間にはあまり差は見られませんでした。0回(0・5回以内)は、生活指導をしても、年齢的に効果がなかなか望めないということを示しています。