健康や生活を脅かす夜間頻尿とどう向き合うか

4.泌尿器科でのリアルな夜間頻尿

《男性LUTS患者の通院状況》

▼ 1回以内の治療効果と3回以上の治療抵抗性

80歳以上の治療(内服、内服+生活指導)抵抗性について、上の図でさらに分析を進めます。

左図は、当院LUTS通院治療中の患者で2019年7月に年代別に集計したデータから作成したグラフです。患者人数の年代別分布とその年代の夜間回数分布を示しています。ただし、0.5回以内を0回、1.5回以内(0.5 <x≦1.5)を1回、2.5回以内(1.5<x≦2.5)を2 回、3.5回以内(2.5<x≦ 3.5)を3回としました。

対象となった患者は、70代が圧倒的に多く、次いで80代が中心であることは先に述べました。2回以上は世代が上がるに従って増加していました。

右図は、1回以内(≦1.5)と3回以上(2.5≦)の割合を示しています。

50代、 60代では治療すれば、1回以内がほとんどで9割を占め、3回以上はごくまれでした。つまり、70歳未満では内服薬も効きやすく、体力、生体機能がまだ回復しやすいので生活指導も効果が良いことがわかります。70代はわずかに効果が落ちていますが、80歳代以上でも56%が1回以内とまずまずの成績でした。

しかし80代では3回以上の治療抵抗性が13%と増えて不可逆的に効果が見られなくなってきている症例群があることを示しています。その原因は、生体機能の劣化と過活動膀胱の治療抵抗性が徐々に進行していることを示しているのではないかと思っています。

70代では体力が低下すると生活指導の効き目が弱くなるのかもしれません。80代では過活動膀胱症状が増えると共に生体機能の低下で治療(内服+生活指導)無効の場合が増えてくるのかもしれません。

特に中途覚醒が増え、その時、尿意のスイッチ(切迫尿意)が入りやすくなっていること、またあとで述べる「見せかけの夜間多尿」が増えるなど、ほかの生体機能が低下していることが考えられます。

しかし、一般人の集団調査である疫学調査では3回以上は80代以上で55.9%となっていますが、それに比べると80代13%、90代21%とかなり抑えられ、治療効果(内服+生活指導)が上がっていることがわかりました。

このグラフでわかることは、若い世代ほど明らかに夜間頻尿の治療効果が高く、年代を経るに従って効果が下がることが明らかです。特に80代以降は治療抵抗性が増していきます。

さらに、図⑤.は夜間頻尿の季節的変化を、月ごとの夜間頻尿の統計で示しました。当院で行った自由研究のデータで、定期通院患者の夜間頻尿の実態を経月的に示し、変化をみたものです。調査内容から見ていってください。