第1章 自分の特徴は自分でもなかなか把握できない
新たな環境のなかで小さな気づきが増える
CMの高校生と同じ生活だった/高校時代
大学入学後、このかなり難解な通信添削の数学の問題で、毎回ほぼ満点をとっていた灘高校の超秀才に出会うことになった。
大学時代の別の同級生に聞くと、高校時代から全国ではかなりの有名人だったらしい。でも、こんな「超優秀な学生」と張り合っても仕方がなかったのだ。
スマートフォンで写真を気軽に撮るような時代ではなかったので、高校時代の写真はほとんど残っていない。しかし、高校3年生の実の生活を想像できるCMがある。満島ひかりさんが「ファイト!」を歌う大塚製薬のCMである。
特に、「とどけ、熱量。」篇に出てくる高校生の姿は、高校時代の実そのものだった。全国の会ったことも話したこともない秀才たちに打ち勝つために、休み時間には、当時大流行であった英単語集や英熟語集を開き、授業が終わるとすぐに家に帰って、ほぼ毎日、少なくとも数学2時間、英語2時間、物理1時間、化学1時間、古文30分の勉強を行っていた。
ただ、カロリーメイトやカップヌードルのような気の利いた夜食はなかった。袋詰めのインスタントラーメンが夜食の時代である。
毎日の勉強の計画表はA0判のポスター用紙にマジックで書いて、でかでかと勉強机横の壁に貼っていた。何度も作っては貼り直していたので、クリーム色の壁は今でも「がびがび」になっている。
その計画がこなせなかった日は強い後悔の念にとらわれ、なかなか眠れなかった。寝るのはいつも午前2時過ぎだった。ひどいときには午前3時を過ぎたように思う。
それほど、全国の見えない秀才たちの存在は実にとって脅威で、勉強すれば勉強するほど不安感は増すばかりであった。