ぎんちゃんは、それは人間が森に畏怖を感じていたからであり、そこに棲む生き物には良いことではあったと思ってます。

ぎんちゃんは、母から聞いた曽祖父の話を、カラスさんや黒猫さん、三毛猫さんにしたくなりました。小さい頃、母が語り部として大変上手で、楽しく聞かされていたので、神秘性がますます膨らんでいきました。

ぎんちゃんが言います。

「カラスさん、黒猫さんと三毛猫さんも聞いてくれるかい。現実味がある話だよ」

皆が、呆れながらも笑って頷きます。

「私の曽祖父だから、今から百年は遡る話だと思うよ。曽祖父は、東京で株式の取引きがあるので、その頃、東京まで汽車が走っている近い駅が長野県の軽井沢町だったらしいが、家からおよそ二十五kmは離れているだろう山道を、朝の汽車に間に合うように、深夜に歩いてたどり着く予定だったらしい。なんせ、浅間山の峠を越さなければたどり着けないところを歩くのだから、それは不気味だったようだ。

護身用に、当時は拳銃を持参していたと言っていた。歩き始めて大分たったころ、妖艶な女性が暗闇から出てきて、旅のお方、家に寄って休んでいきませんか、と誘うのだそうだ。うっかり付いて行きそうになったけれど、あまりに怪しいので銃を空に向けて撃ってみたんだって。そしたら、一目散に逃げる狐のような姿を見たんだってさ」

皆は大笑いです。

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