カラスさんは興味津々(しんしん)で聞きます。

「何だよ、その化かすとは。キツネさんは何かに変身するのかね」

ぎんちゃんが続けます。

「私が子供の頃、母から、曽祖父が夜中に女性に変身したキツネに騙された、という話を聞いたよ。本当かどうかは分からないが、キツネさんには、そのように思われる魔性の魅力があるのかもしれないと思って、直接会って聞いてみたいのさ」

カラスさんが呆れて笑ってしまいます。

「ぎんちゃんは、それをずっと今まで、本当だと思っていたのかい。随分と人間は傲慢(ごうまん)だけど、可愛い臆病な生き物なんだね」

ぎんちゃんが、カラスさんにしつこくお願いします。

「この森に棲んでいるか、イノシシさんにでも聞いてよ」

ぎんちゃんのおかしな興味本位の話には、カラスさんも好奇心旺盛なので、ホイホイと乗っかってしまう悪い癖があります。

「ぎんちゃんは本当に厄介な人だね。おいらも面白くなったから聞いてみるよ」

人間は想像力があるから、それが恐怖心と重なると瞬時に思わぬ妄想に走ります。あのしなやかな身の隠し方は、若い女性か、それとも幽霊かもしれないと妄想を掻かき立てられてしまいます。誘い込まれたら大変ですが、見たくてしょうがなくなります。

そんな怪しさが、人伝えの話として様々な話も加えられ、キツネには怪しさがあり人を化かすなどの伝説が多くでき上がりました。