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ユーリはさっきからもう一定の音しかたてなくなっている電気シェーバーのスイッチを切った。

この瞬間からまた次の再生がはじまるのかと思うと忌々(いまいま)しいが、まあいい、とりあえず停戦だ。

彼は剃りあげた毛穴にスキンクリームをすりこむと外に出た。

そろそろ正午だからカーシャが鐘をつきにくる時間だ。

鐘がないのに?

そう、鐘もカリヨンもなくなってしまったのに、カーシャは毎日決まった時間になるとあの階段をくるくる回って鐘塔の上までいく。一度身に刷りこまれたことを抜き取るのは覚えこませる以上に至難の業らしく、ニコにさえもこの呪文の解き方はわからなかったようだ。

どうせあの子は暇なんだもの、好きにさせておきなよ、と人は言うが、無駄なことは無駄だ。カーシャの徒労に終わるのがわかっていながら、止めさせるのが面倒だという理由でこのままにしておくのは酷じゃないか。いい加減わからせてやるために、今日は一緒に上までいってやろうとユーリは決めていた。

「もういくことないんだよ、カーシャ。上にいったってカリヨンはないだろ」

塔の前で捕まえていつもどおりに言ってみたが、まるで聞いていない。