1 さて、お別れに、何を残そうか……

(3)死んでからでは遊べない

厚生労働省の簡易生命表(平成27年)の平均余命(日本人)によると、65歳まで生きた人はさらに、男性19・46年、女性24・31年、生きられる。今75歳の人は、男性12・09年、女性15・71年の余命がある。

そんなに生きなくてもいいと思う方も多いだろうが、統計上はあなた方の半分はこの年数以上の人生が続く。10年も20年もただ老いにまかせて色どりのない人生のときを過ごすのは、もったいないと思う。

良かろうが悪かろうが、たった一度のあなたの人生、ちょっとだけ踏み外して遊んでみてはいかがだろうか?

死んでからでは遊べないのだから……。

(4)「来し方」の総括と「行く末」の目途

個人的な過去と未来のことを、過ごしてきた日々とこれから先の日々という意味で「来し方行く末」とよく言う。「こしかた」と「きしかた」の二通りの読み方があり、平安時代の昔は、時間の流れには「きしかた」、来た方向と行く先の方向という空間的意味には「こしかた」と使い分けていたとも言われている。

読み方のことはさておき、「源氏物語」や「平家物語」にも、人生を思うときの表現として「きしかたゆくすゑ」が使われている。それらは、幾分憂いか哀しみを込めた深い思いを情緒的に表現する場面である。

「来し方行く末」を、私たちのこととして考えてみよう。

「来し方」と「行く末」の両方を自覚できるのは、いくつのときであろうか。

10代、20代のころは、漠然とした将来への不安と期待を抱きながら、毎日毎日、その日あった出来事に一喜一憂を繰り返していたように思う。

しかし、その日々が妙に楽しくもあった。そのような世代では、来し方は存在しないし、行く末も現実味を持たない。目の前の今があるのみである。