[判旨]
Hope判決が明らかにしたところによると、料金が「公正かつ合理的」な範囲を超えることが主張されるときは、その決定の結果の分析に焦点が当てられることとなる。
Hope判決においても、正当な投資者の利益には、規制を受ける会社の財務上の健全性が含まれることを明らかにしている。
そして、投資者にとっては、経常費用だけでなく営業の資本コストのためにも十分な収益が存在することが重要であることを認め、その信用を維持しおよび資本を引きつけるために財務上の健全性に対する信頼を得るために十分な利益が必要であることを判示している。
それゆえ、規制を受ける会社にはその信用および資本を引きつけるに足るだけの財務上の健全性に対する信頼を確実ならしめるのに十分な収益が認められなければならない。それゆえ、委員会による再審査の請求を認めるとして、差し戻した。
しかし、本判決には反対意見があり、判示によると投資がなされた時点で賢明であれば投資者には利益が保証されることになると指摘している。
[コメント]
本判決は、Hope判決に従うもののようであるが、委員会の料金決定の再審査を求めるだけのものであり、料金決定が消費者を食い物にするのか、それとも私有財産の没収にあたるのかを判断できないので、再審査を認めた事件である。
注目のストランデッド・コストについては公益事業委員会レベルにあたる連邦エネルギー委員会においてあっさり認められている。
これは、これまでの判例において、公益事業の役務の提供に使用されかつ有用な財産のみが料金決定のベースに算定されるとしてきた考え方を否定するものとなっている(Richard Pierce, Public Utility Regulatory Takings:Should the Judiciary Attempt to police the Political Institutions? 77 Georgetown L. Rev. 2031, 2037〈1989年〉)。
そして、料金決定のベースの算定に際して、電力会社の財務上の健全性が重視されたことが注目される。本判決の反対意見は、投資者の利益保証となることを指摘している。
たしかに、料金は収益の最低および最高の範囲を画するバランスとしての性格があり、料金が結果的に高かったときはそのバランスは投資者に味方するし、もし低かったときはバランスは消費者に味方することとなるといわれている(American Telephone & Telegraph Co. v. FCC, 836 F.2d 1386, 1390〈1988〉)。
料金決定においてこのような緩衝的要素がある以上、電力料金において投下資本が利益保証されるとだけいうのは行き過ぎかもしれない。
(2)デュケーン電灯会社事件
(Duquesne Light Company v. Barasch 488 U.S. 299〈1989年〉)
[事実の概要]
ペンシルベニアの電力会社の集合が、原子力発電施設7基を建設する事業を立ち上げた。
【前回の記事を読む】電気事業の自由化に舵を切った政府。規制緩和によるストランデッド・コストの回収問題に注目