第1部 電力会社のコーポレート・ガバナンス
1.原子力発電と電気料金
1-5 公益事業株式会社の合理的経営判断は補償されるか
(2)デュケーン電灯会社事件
しかし、1980年に、アラブの石油停止やスリーマイル島の事故などを含む逆風となる出来事が生じたために、4基の建設をキャンセルした。
参加企業のデュケーン電力会社は、ペンシルベニア公益事業委員会に対して、料金引き上げ及びこの4基の廃棄された施設の費用を10年で償却することを申請した。
同委員会は、同会社が同施設の建設に参加すること及びこれを終了させることの両方の判断をしたことはそれがなされた状況下では合理的なものであった旨の調査報告を受けて、キャンセルした費用の償却費を含む料金引き上げを認めた。
しかしながら、料金決定手続きの終了直前になって、次のような州法(Act 335)が成立した。すなわち、電力会社の発電施設の建設費用は、その施設が公衆の役務に供されるときまでは料金の基礎となすことができないというものであった。
同州の消費者保護庁は、同委員会に対して同法に照らして決定の再検討を求めた。
同委員会は、再検討の結果、新法は発電施設の建設費用がその施設の公衆への役務の提供のために使用されるまで算定されてはならないとするものであって、費用の償却による回復を妨げるものではないとして前記の決定を確認した。
また、同委員会は、この間にペンシルベニア電力から請求された廃棄施設の費用を10年で償却することの承認と料金引き上げについて、これを認めた。以上の二つの決定について、消費者保護庁が裁判所に提訴した。裁判所(Commonwealth Court)は、同委員会がAct 335を正しく解釈したと判示した。
しかし、ペンシルベニア最高裁判所は、同法が当該費用の回復を料金の基礎に含め又は償却することのいずれをも禁止するものであり、同法は修正第14条によって州について適用される修正第5条による財産権の規定に違反するものではない旨を判示した。合衆国連邦裁判所は、ペンシルベニア最高裁判所の判断を支持した。