[判旨]
州の消費者に電気を提供するという公益のために財産が使用されるが、それらの財産は、私的な投資者により所有され、運営される。この部分的には公的であり、また私的であるという公益事業の財産は、修正第5条のTakings条項の問題を生じさせる。
財産権の制約に対していかほどの補償をすればよいのかについて、判例は、かつては財産の「公正価格」基準を打ち立てたが、価格の算定が困難であることから、「合理的投資」(prudent investment)又は「取得費用」(historical cost)の考え方に移り、1944年の Hope判決が画期的判決となって、補償の算定の基礎として「取得費用」が有効だと判断されるようになった(FPC v. Hope Natural Gas Co., 320 U.S. 591)。当裁判所もこれに従う。
ペンシルベニアの料金決定は、取得費用/合理的投資の方式をわずかに修正したものであり、上告人はいずれもその方式が不公正又は不合理であるとの主張をしていない。
デュケーン電力会社は、普通株について16.14%、料金算定基礎の11.64%の収益(return)を認められている。廃棄される当該投資額は料金算定基礎の1.9%であり、その償却を認めなかったことによる収益の減少は4%にすぎない。
ペンシルベニア電力会社は、普通株について15.72%、料金算定基礎の12.02%の収益を認められている。廃棄される当該投資額は、料金算定基礎の2.4%であり、その償却を認められなかったことによる減少は5%にすぎない。
本判決において、3人の判事が、料金決定の合憲性の問題は、適切に投下された全ての資本に対する収益の水準によるのであり、この投下資本には投下されたものが料金支払者に何ら利益をもたらさなかったとしてもこれを含むものである、との意見を表明していることが注目される。
[コメント]
本件判決は、「州の消費者に電気を提供するという公益のために財産が使用されるが、それらの財産は、私的な投資者により所有され、運営される。
この部分的には公的であり、私的であるという公益事業の財産は、修正第5条のTakings条項の問題を生じさせる」ことを明言している。それでは、どのように補償の額をとらえるかが料金の決定において問題となってきたようである。
1898年のSmith v.Ames判決は「公正価格」基準を打ち立てたが、その算定方法が困難であり、政治的プロセスに有意味な司法上の制約とはならなかったようである(後掲Richard Pierce, at 2031)。
本件判決の引用するHope判決によってはじめて有意味な基準が生み出されたようであり、本判決もこれによっている。
結局のところ、本判決では3人の判事の付帯意見のように解釈しても、ストランデッド・コスト回収分は料金算定基礎においてすでに含まれていることとなり、Hope判決のいう結果的に妥当な料金であった事例であったといえよう。
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