第2章 姿勢について
悪い姿勢は万病のもとで、肩こり腰痛はもちろん、膝が上がりにくくなるので転倒しやすくもなりますし、前傾姿勢を続けると肋間筋という肋骨の間にある筋肉が硬くなり、肋間神経痛になることもあります。
とはいえ姿勢に気を付けましょうと言われても、なかなか難しいかと思います。この章では、何をどのようにすれば良いのかという具体的な対策を詳しく解説します。
猫背は衰えのもと
おせち料理のエビは背中が曲がるほど長生きしてほしい、という意味合いだそうです。そのくらい日本人には「年を取っておじいちゃんおばあちゃんになったら背中が丸くなってくるもの」というイメージがありますが、実は高齢になったから自然に丸くなるわけではありません。
六十歳過ぎなのにすでに腰が曲がっている人もいれば、八十歳を超えても若々しくまっすぐな姿勢をキープしている方もいると思いませんか?
人間の頭は五〜七キロ、ボーリングの球くらいの重さがあるといわれています。若いうちは筋力があるので重い頭を含む上半身を支えていられますが、人は年齢が上がるにつれて少しずつ筋肉が落ちていきます。高齢になり腹筋背筋が衰えて姿勢を維持するのが難しくなってくると、上半身の重さに負けて腰や背中が曲がっていきます。
姿勢はまっすぐの状態であれば保持するのは簡単なのですが、少しでも曲がってしまうと保持するのがつらくなり、つらいから曲げて、曲がったからもっとつらくなり……と、どんどん曲がっていってしまいます。しかし姿勢が悪くなり始める一番初め(猫背)の時点で対処できれば、エビのように背中が曲がってしまうのをある程度予防できるのです。
胸部と背上部は肋骨 (ろっこつ)という樽(たる)型の骨組みがあるので、前後左右に曲げにくい構造になっています。そのため猫背の影響を大きく受けるのは腰部分です。身体を首から腰まで貫く背骨は、椎骨といわれる硬い骨の間に椎間板 (ついかんばん)という軟骨が挟まってできています。だるま落としの間にゴムパッキンが入っているイメージです。
若い方でも「楽だから」と言って腰を丸めた姿勢でいる方がよくいます。なぜ楽だと感じるかというと、丸まっている状態でいると腹筋背筋を使わないからです。