はじめに

はじめまして、和田由美と申します。

私は短大卒業後、普通の会社員をしておりましたが、どうにもデスクワークが合わず、二十八歳で柔道整復師(じゅうどうせいふくし)の夫と結婚、ほぼ同時に一念発起して鍼灸(はりきゅう)の専門学校に入学しました。

三年間の専門学校の一年生と二年生の間の春休みで出産をし、二〇一五年に国家資格を取って、卒業した段階では満二歳児の母。

入学前は夫の整骨院の受付でも手伝いながらはりきゅう師をしようと思っていたのですが、鍼灸の奥深さや難しさ、患者さま一人ひとりと向き合う喜びに魅せられて、すっかり鍼灸治療の世界にハマってしまいました。誰に話していいかわからない身体の悩みを誰よりも話しやすいはりきゅう師を目指して日夜励んでおります。

本記事に目を留めてくださった方はおそらくご自身、もしくは親しい方が長く続く痛みに苦しんでいる方でしょう。普通の生活すら阻害する頭痛、朝目覚めて身体を起こしただけで悲鳴を上げる腰、ちょっと歩いただけで苛烈な痛みが出る膝。つらい痛みを何とかしようと思っていない人はいないはずです。

あなたも病院に行ったり、サプリに頼ったり、テレビで見た健康体操を試したりしたことがあるのではないでしょうか。何とかするためにがんばっているのに、いっこうに痛みが楽にならない。

でもそれはあなたの努力が足りないわけでも、日頃の行いが悪いわけでもないんです。ただ痛みのメカニズムを知らないだけ。

なぜ痛いかを知れば、どうすれば痛くならないかが見えてきます。本連載がそんな多くの人が悩む「痛み」から解放される手助けになれば、と思っております。

第1章  痛みの原因を考える・「なぜ痛くなるのか」を知ってほしい

痛みを抱えた方とお話しすることも私の仕事のうちですが、仕事と関係ない食事会などでも、痛みについてよく相談されます。

しかし皆さま、気にするほどには痛みについて理解していないように思います。例えば病院にかかって、椎間板ヘルニアと診断された方は「ヘルニアらしい」ということがわかっています。

でも椎間板ヘルニアが何なのかはわからないし、なぜ痛いのか、を知らないことがとても多いのです。この章では、部位ごとの痛みの前に「なぜ痛みが出るのか」について解説をします。