【前回の記事を読む】その痛み、「筋緊張性頭痛」かも? 解消のカギは「特効穴」にあり! 目の疲れ・かすみ目・肩こり・頭痛をまとめて対処

第4章 痛くなる部位別、痛みの原因と対処

 腰まわりの痛み

②椎間板ヘルニア

第2章「姿勢について」に記載しましたが、腰椎(背骨の腰部分)はだるま落としの間にゴムパッキンが挟まった状態になっています。このだるま落とし部分を椎骨といい、ゴムパッキン部分を椎間板といいます。

椎間板にはある程度柔軟性があり、筋肉が硬いことなどが原因で椎骨の間が狭まると、ぷにゅっとはみ出してしまいます(ヘルニアはドイツ語ではみ出るの意味)。このはみ出した部分が腰から脚に行く神経に当たると、痛みやしびれが出ます。

整形外科に行くと椎間板ヘルニアは不可逆的な(治らない)痛みのように言われますが、椎間板には柔軟性があるので、背筋まわりの筋肉が緩むとはみ出た部分が解消することがあるのです。

なお、このゴムパッキン部分は加齢とともに弾力性を失います。プラスチック板のように硬くなり、はみ出しにくくなるので椎間板ヘルニアは六十歳以上には逆に起こりにくくなります。高齢の方で突然しびれが出現した場合は他の原因が考えられます。

椎間板ヘルニアはレントゲンを撮れば簡単にわかる疾患ですし、二十〜四十歳代にはかなりの高確率で出現します。しかしレントゲンではヘルニアになっているかは判断できますが、神経に当たっていなければ痛みやしびれは出ませんし、その痛みやしびれが本当にヘルニアだけが原因かはわかりません。

そもそもヘルニア自体が筋肉の硬さが原因で起きやすいので、整形外科でヘルニアと診断されたら、転倒等の外傷性でもなければ腰まわりの筋肉が硬いはずです。

つまり、筋肉の硬さが原因で痛みが出ている可能性もかなりあるのです。ヘルニアと診断されたら「ヘルニアだから仕方ないね」と思いがちですが、痛みが悪化しない程度にストレッチをしたり、メンテナンスを受けたりすることはとても大事です。

③圧迫骨折

高齢者にすごくよく起こります。転倒して尻もちをついたときのほか、骨粗鬆症を患っている方だと、ただ座っただけでも起こり得ます。骨折というと腕や脚の長い骨がぼっきり折れる状態を想像すると思いますが、圧迫骨折は腰の骨(腰椎)もしくは椎間板が転倒など何らかの衝撃で潰れてしまった状態をいいます。

運良くまっすぐ潰れてくれればいいのですが、斜めに潰れてしまうとしびれや痛みが出現したり、お腹側だけ完全に潰れてしまうとまっすぐ腰を伸ばせなくなったりすることもあります(尻もちをついたときによく起こります)。 

残念ながら圧迫骨折は起きてしまうと治りません。整形外科へ行き、痛み止めの薬やブロック注射で痛みを取り除く処置をしてもらうだけです。そのため何より予防が大切です。

年齢が上がってきたら転ばない、脚立に登らない、駐車場を歩くときは輪留めに注意する、しっかり足を上げて歩く、などに気を付けていただきたいです。

④坐骨神経痛

ほとんどの方が意識していませんが、お尻の筋肉・大殿筋は身体の中で二番目に大きな筋肉です(一番は太ももの前の大腿四頭筋)。そのため担っている役割も多く、立っているときも座っているときも歩いているときも使います。

お尻のあたりから太ももの裏あたりまでに響く痛み・しびれを坐骨神経痛といいます。トイレで長時間座り続けたときや、長距離運転の後車から降りたときにビリビリしびれる感じを経験したことがあるのではないでしょうか。

身体に張り巡らされている神経は脳から出て、背骨の中を通り、椎骨の後ろから出て伸びていきますが、坐骨神経というのは坐骨というお尻の近くの骨から出て、一度お尻の筋肉の間を通って足の後ろに伸びます。お尻の筋肉を使い過ぎるなどして固まると、間を通る神経を締め付けて痛みやしびれが出る、それが坐骨神経痛です。つまり、これも筋肉が固まったことが原因です。

⑤大腿骨頸部骨折

股関節は肩の関節同様、骨盤のくぼみに大腿骨の丸い部分がかみ合わさってできています。肩の関節と大きく違うのは、上半身の重みをもろに支える関節(過重関節)だということです。そのため、大きな筋肉や強い腱が複雑に交差していて、不調が出やすい関節といえます。

太ももの骨には関節している丸い部分と本体の長い部分の間に細い部分があります(大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)といいます)。高齢者の転倒で太ももの骨折というと多くはこの部分の骨折です。

ここが折れるとほとんど治癒しないので、股関節の人工置換(人工関節を埋め込む)手術になります。全身麻酔が必要な大手術で、退院まで数か月かかることもあります。しかもこの手術をできればまだいいほうで、金属部分を受ける側の骨が弱過ぎる、そもそも身体が手術に耐えられない等、整形外科医の判断で手術ができない場合、一生車椅子生活になります。やはり最も大事なのは予防で、転倒しないにつきます。

 

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