結婚、そして屋久島へ
私の仕事は主に一年契約で、声がかかれば同じところに数年は在籍できたが、だいたい一年で異動になった。二つ目の職場で、今の夫となる人に出会った。夫は初め古風な印象を私に持っていたらしいが、私が星や植物、その他様々なことに興味があることを知ると、珍しさからか、からかったり、面白がるようになった。
倉本聰の本『ニングル』に影響を受けた私が、北海道の小人について力説すると、「やば」と夫は苦笑い。少々頭の痛い子だと思ったようだが、好意を持ってくれたようだった。
趣味も生活パターンもお互いまるで違ったが、少しずつ惹かれ合い、交際することになった。年齢的にも、お互い結婚を意識する歳。私は夫に、母には会ってもらっていたが、父には会わせなかった。会わせられるような人ではない、と思っていたからだ。
しかし、母がある日言った。
「お父さんが、里子の彼氏は、皇太子かなんかかって言っちょっど」
「……」
私は、夫を父に会わせることにした。ある日の晩、父を前にして夫は言った。
「娘さんと、結婚させてください」
父は、酔ったような声で答えた。
「よかんも、よか」
このときのことを、あとになってから夫に聞いたことがある。初めて私の父を見て、どう思ったかを。夫は少し言いにくそうに、うーん、と唸った。
「きみが気を悪くするかもしれない……」
「いいよ、言って」
「可哀想だと思った。きみのこと」
「……」
それはそう思うだろうな。私は夫の横顔を見た。気なんて悪くしないよ。本当のことだ。私は黙って空を見つめた。
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