「ああ。その三日後に大量の血を吐いて他界した。安らかな顔をしていたよ」
「最後の願いを叶えたということだね。ねえ、どうして東京から来ることができたのか、お婆ちゃんから聞いた?」
「ああ、もちろん。だが、初枝もどうして自分がここにいるのかよくわからないと言うんだ。気がついたら、白無垢を来てこの家の玄関にいたらしい」
「お婆ちゃんを呼び寄せた。それが、お爺ちゃんの力だったってこと?」
「いや、そうじゃない。この角一本ではそこまではできなかったと思う。それは、親父とわしの力を合わせた大きな力だったと今では思っている。集まってくれた村の人たちは、宴が終わってからは、わしと初枝の披露宴に呼ばれたと言っていたが、始まるまでは誰もわしの相手のことなんて知らなかったんだ。何やら集団催眠のような力が働いていたのかもしれない。そんな、すべてがわしらの力の成果だったのではないかと思っている」
「だから、俺にも今夜同じようなことが起こると、お爺ちゃんは考えているんだね」
「ああ。だが、おまえには後生を誓い合った女性がいないことが少し気にかかるんだ」
爺ちゃんの顔色が少し曇ったように感じた。今の話を聞くと、爺ちゃんの父さんは自分の死期を悟ったので後継者の披露を急いだというものだった。それじゃあ、今俺のこの状況というのは……。
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次回更新は11月4日(月)、22時の予定です。