四年生の時、倶楽部に僕と同年代の子が二人入ってきた。同い年の(きょう)ちゃんのお父さんはT大学医学部の教授で、一人息子に自閉症(じへいしょう)を思わせる特性があるといって馬に触れさせることにしたらしい。でも、僕にはごく普通の男の子に思えた。一つ年上の有紀ちゃんは、健太さんに馬の飼い方を伝授した厩務員今井さんの娘だった。

お姉さんだし大人っぽい雰囲気、しかもすごく綺麗なので最初は遠慮していたが、案外お茶目な有紀ちゃんは僕たちとあっという間に仲良しになり、三人とも次の休みが待ちきれないほどだった。僕はアートが、恭ちゃんはバロンが、有紀ちゃんは唯一の牝馬のハッピーが愛馬だった。

有紀ちゃんはびっくりするほどハッピーを上手に乗りこなした。バロンとはつかず離れずの距離を保つように気をつかうので、ハッピーは「気の利いた子ね、女心が分かってるじゃない」とでも言いたげな表情でご満悦だ。

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