1-4解説
これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも あふ坂の関
名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな
夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の関はゆるさじ
淡路島 かよふ 千鳥の なく声に 幾夜ねざめぬ 須磨の関守
逢坂の関、須磨の関と、関を題材にした歌がきっちり4首撰ばれています。関を題材にした特徴ある歌が、このようにしっかり4首撰歌されているのも、4首単位の撰歌作業を強く示唆していると考えられます。
前半の2首では、逢坂の関にことよせて、なんとかして人に知られることなくあなたに「逢い」たいと歌います。
逢坂の関の3首の内の最後の1首では、鳥の鳴く声が表現されていて、4首目の須磨の関の歌と共通します。また、3首目と4首目では、多くの類似語が相重なるように詠み込まれています。
夜〜幾夜
鳥〜千鳥
そらね〜なく声
逢坂の関〜須磨の関
ということで、この4首も、前々節の「風そよぐ」、前節の「夜半の月かな」と同様に、前半の2首、後半の2首とが明確に区分して配列されていることがわかります。
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