第一章 やまとの国の自然の姿や様々な風物

第3節 夜半の月かな雲に見え隠れする月、雲に隠れて姿を消す月など、様々な月の風情を歌います。

 

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【訳】夏の夜はまだ宵(よい)の内と思っているとすぐに夜が明けてくる 雲のどこかに月は宿を取れたのかしら

【歌人略歴】

清原深養父(きよはらのふかやぶ)生没年不詳。平安時代中期の勅撰歌人。『古今和歌集』以下の勅撰和歌集に41首が入集している。家集に『深養父集』がある。中古三十六歌仙の一人。

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【訳】秋風にたなびく雲の絶え間から漏れ出てくる月影がとても清さやかに見えてくる

【歌人略歴】

左京大夫顕輔(さきょうのだいぶあきすけ)1090-1155年。藤原顕輔。白河上皇の代に院の近臣として昇進した。多数の歌会、歌合せで活躍し、父顕季より六条藤家(ろくじょうとうけ)の象徴であるひと人麻呂影供(ひとまろえいぐ)を受け継いだ。上皇から勅撰集撰進の命を受けて『詞花和歌集』を完成させ、奏覧に供した。『金葉和歌集』(14首)以下の勅撰和歌集に84首が入集しており、家集には『左京大夫顕輔卿集(顕輔集)』がある。