【前回の記事を読む】見捨てられた屋敷の寂しさ、引き続いて外に出てみれば秋の夕暮れがいずこも同じく寂しいと歌われていて…

第1部 後鳥羽院 順徳院への追慕

第二章 やまとの自然の姿が引き起こす様々な想い

第2節 悲し

月を眺めていると何故か悲しくなる、自然と涙がこぼれ、更には涙がとめどなく流れると歌います。

 
 
 

2-2-1

 

【訳】

ほととぎすの鳴く方角(方)を見てみると
その姿は見えずただ有明(ありあけ)の月(明け方まで残る月)だけが空に残っている

【歌人略歴】

後徳大寺左大臣(ごとくだいじのさだいじん) 1139 -1192年。徳大寺実定(さねさだ)。平安時代後期から鎌倉時代初期にかけての公卿・歌人。官位は正二位・左大臣。
詩歌管弦に優れ、教養豊かな文化人であった。「住吉社歌合」『右大臣藤原兼実家百首』など、多くの歌合せ・歌会に参加している。『千載和歌集』『新古今和歌集』などの勅撰和歌集に73首が入集している。家集に『林下集(りんかしゅう)』がある。