1-3-3

【訳】巡り会ってあの方かしらとはっきりしないうちに

夜半(よわ)の月のようにもう雲隠れして見えなくなってしまった

【歌人略歴】

紫式部(むらさきしきぶ)970(推定)-1014年(推定)。平安時代中期の女性作家。『源氏物語』の作者であり、藤原道長の要請で宮中での様子を書いた『紫式部日記』も残している。『源氏物語』の評判を聞いた藤原道長に召し出されて、道長の娘である一条天皇中宮の彰子に仕えた。歌人としては、自らが詠んだ歌から撰び収めた『紫式部集』がある。中古三十六歌仙の一人。

1-3-4

【訳】心にもなくこの世に長生きしてしまった

今は夜半の月でさえもとても恋しく感じられる

【歌人略歴】

三条院(さんじょういん) 976-1017年。三条天皇。第67代天皇(在位は、 1011-1016年)。三条天皇として親政を望んだが、藤原道長と対立し、その圧力で後一条天皇に譲位した。この歌は譲位の際に詠んだ歌とされる。

1-3 解説

夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ秋風に たなびく雲の たえ間より もれいづる月の 影のさやけさ

めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな

最初の2首は、夏から秋にかけての月の情景を描いたものです。雲に見え隠れする月のたたずまいを表現豊かに歌っています。

後半の2首は、少し人の気配を感じさせながらの月の風情を歌っています。4首とも「月」が共通語となっています。

1~3首にわたって類似性の極めて高い類句が認められます。

    雲のいづこに(1首目)

    雲の たえ間より(2首目) 

    雲がくれにし(3首目)

また3首目と4首目は、同じ句「夜半の月かな」で終わっています。

相似ている4首の中にも、前半の2首、後半の2首とがしっかりと区別して配置されます。

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