那古の海

金沢

金沢へは、旧暦七月十五日着。かねてより俳諧を通じて親交のあった一笑に連絡したが、去年の冬死亡していた。

 塚も動け我泣声は秋の風

 秋涼し手毎にむけや瓜茄子

 途中吟

 あかあかと日は難面(つれなく)もあきの風

金沢には八日間滞在したが、かねてから俳諧の盛んな土地で、熱心な若い俳人が多くいた。近江の乙訓も、商用で当地に来ていたところで初対面。後日蕉門の有力後援者となる。北枝という若い人がいて、芭蕉に傾倒、この後の旅についてくる。北枝は後年、蕉門十哲に数えられ、蕉風俳諧の推進役として活躍する。

小松

小松の太田神社で斎藤実盛の甲・錦の切も見る。木曾義仲贔屓の芭蕉にとっては万感の想いであった。

 むざんやな甲の下のきりぎりす

那谷

山中温泉で曽良は腹痛のため、一足先に出発。別れを惜しみ

 今日よりや書付消さん笠の露