就労中にトラブル発生

順調に毎日通勤していた泰子さんは、その日も利用者さんと一緒に昼食の準備をしていました。

しかし、ここ数日一人の男性利用者さんが「手伝わない」「片付けない」「お礼も言わない」と駄々をこねることが続いていたそうで、泰子さんは腹を立てていました。そして泰子さんは、ついにこの日過呼吸になってしまいました。

昼食の準備を手伝うのはやめることにし、さらに勤務時間を午前中だけにすることになりました。すると、ストレスがなくなったのか、その後はまた順調に通勤していたので私は一安心したのでした。

自転車が乗れなくなったら

大起エンゼルヘルプの和田行男さんからは「自転車が乗れなくなるまで働いてもらおう」と言われていました。もちろん泰子さんもそのつもりで、順調に通勤していました。

しかしだんだん運転が怪しくなり、自転車で転んで帰ってきたことが何回か出てきて、また、行きは頑張って自転車に乗っても、ほとんど帰りは自転車から降りて手で押して帰ってくるようになりました。

もう、自転車での通勤は無理なようでした。一年四か月働いたグループホームなごみ方南でしたが、残念ながら退職することにしました。

二〇一八年二月二十八日に、二人で職場に自転車で行き、退職のご挨拶をしました。一緒に働いていた障害者のちいちゃんが「楽しかった。ありがとう。残念」と言って、別れを惜しんでくれていたそうです。

「注文をまちがえる料理店」に誘われて

二〇一七年に、大起エンゼルヘルプの和田行男さんから「注文をまちがえる料理店」への参加を誘われました。

詳しくは第六章で書きますが、このお店は泰子さんのような認知症の人たちがホール係となって、お客さんの注文をとり、もしそれで間違った料理が出てきても、それを楽しんでもらうことをコンセプトにしています。

このときも、泰子さんに参加するか聞きました。すると、やはり少しでも役に立ちたいということで、参加することになりました。

実はこの出会いが、泰子さんにとってのターニングポイントになりました。そのことについては後で詳しく書くことにします。

【前回の記事を読む】認知症になっても普通の生活を!「小さな旅人たちの会」認知症患者を支えるコミュニティの存在。

次回更新は10月1日(火)、18時の予定です。

 

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