ただ、森の中の道を歩く途中で聞こえた鳥のさえずりや、木々の間を吹き抜けるさわやかな風の音はぽろもきの耳に優しく響いた。大都会島では、計算能力の低い役に立たない自分でも、この森の自然は、柔らかく受け入れてくれているような気がする。
全く都合の良い解釈なのに、何故かその解釈が当たっているような安心感に満たされることも事実だった。
自然の中で、新鮮な空気を吸って過ごせることに幸せすら感じる日もあった。青空に白い雲が浮かぶ日は特にそうだった。
ある日、周囲を歩いてみると、家から30メートルほど離れたところに湧水があった。そばの木の看板には、「この水は、山の天然ろ過を通して無毒化された、貴重な天然の飲料水です。どうぞご自由にお飲みください」と書いてあった。
ぽろもきは“湧水の恩恵”を受けて暮らすこととなった。
【前回の記事を読む】幼さが消えて少年になる頃に両親の元に返されたぽろもき。それは悲しい時間の幕開けだった