第4章 アルミ鋳物の創業

松葉工業の創業期

1週間ほど経って、工場長から1サイクル、どうしても40分掛かると報告があった。

松葉は驚いた。設備メーカーの話では20分サイクルでの稼働とのことだった、事実と違うではないか、40分から50分も掛かっている、とクレームをつけようかと思ったが、思いとどまり、根本的に見直してみる必要があると思い直した。

「20分サイクルという謳い文句だったが、設備の欠陥か、それとも他に原因が考えられるか」

「自動機導入に当たり、検討したことをもう1回見直してみたらどうか」と、検証して報告するように工場長に指示した。

2週間ほどしてからの報告書には、次の内容が書かれていた。

一、空運転と連続運転の違い

二、自動機械の速度と金枠の数の問題

三、人員配置の問題

四、溶解量と枠数の関係

それぞれの問題点について、詳細が述べられている。一読してよく調べられている、と思った。

工場長を呼んで、改めて意見を聞くことにした。工場長は、次のように応えた。

一概に設備の欠陥とはいえない、と思う。人員の慣れで10%は短縮できる、周辺道具を揃える、金枠を1セット増やす、そして溶解炉を1基増設する必要があると訴えた。しかし、20分サイクルは難しいのではないか、と悲観的だった。

受注残はどれぐらいか、と松葉が尋ねたところ、2か月分ほどあるという。20分サイクルなら何ら難しいことではなかったが、40分では受注分の納期遅延を起こしてしまう。

工場長にどうすればよいかと問うたところ、2交代制にしたらどうか、と言う。相変わらず泣き言は言わない、できるように考え、常に前向きの姿勢は実に頼もしい存在だった。

よし、頑張ってくれと励まし、任せることにした。