2交代制

2交代制がどうにか軌道に乗ったと思われた頃、工場長から電話がかかってきた。

「警官が来て、ご近所から夜間うるさいと苦情が来ているので夜遅くの操業はやめてくれと言われました。どうしましょう」と心配そうな声で言う。

松葉は驚いた。

「わが社は、都城市の隣町の誘致企業としてここに工場を造った経緯がある。ここは工業地域だと聞いている。工場が忙しく動いているのを喜んでもらうことがあっても、お叱りを受けることはないだろう。まぁ、夜遅くなって、金属音など高い音は出さないように気を付ければよいだろう」などと自制して、できるだけ迷惑を掛けないようにしてその場を凌ごうとした。

しかし、10日もしないうちに、今度は町の公害防止課の担当者がやって来た。たまたま松葉も工場に来ていて、工場長と一緒に担当者の話を聞いた。

近隣の家から役場に電話があって、夜、騒音で眠れないので、何とかして欲しいと苦情があったとのこと。

松葉は担当者の話に納得がいかないまま、お詫びして昔の話を持ち出した。

「弊社がこの地に工場を造ったのは昭和35年頃です。私が高校生の頃です。その頃周りは畑ばかりでした。一軒の家もなかったです。2、3年してから隣に自動車板金工場ができ、瓦工場、道路を挟んで家具工場そして金属加工の工場が隣にできました。

それらの工場に囲まれた隣の空き地に住宅ができたのが、昭和45年頃かな。私が都城に帰って来た頃でした。何でこんな工場の中に住宅を作るのよ、こんなところに作らなくても空き地は近くにいくらでもあるじゃない、と思ったのを今でも覚えています」

ここは、工業専用地域ではないから何も言えないが、あとから出てきて、何言ってんの、と言いたかったが、言わなかった。

松葉は、社内で操業時間を検討して、明日には返事します、と担当者に告げて、その場はお引き取り願った。