第4章 アルミ鋳物の創業
鋳造機械2号機の導入計画
「工場長、10時までの残業で受注を消化できるか」
と松葉が工場長に聞くと
「頑張ってみます。しかし、ここをよしんば乗り切ったとしても、今後の受注物件を消化することは難しいと思います」
「そうだな、俺もそう思う。メーカーに設備の増設の電話を入れてみるよ」
早速松葉は電話を取った。
「課長さん、お元気ですか。実は計画より前倒しで、同じ鋳造設備を増設したいのだけど」まで言うと、課長は驚いて、
「もう増設ですか。分かりました。製造と打合わせてみます。ちょっと工場が忙しくなってきています。のちほど連絡させ下さい」
松葉は同時に、松葉工業の建設部門の部長に、工場を増設したいので図面を書いてくれ、急ぐので明日にでも担当者に工場に来るように指示して欲しいと頼んだ。
その日の夕方、社長から松葉に電話があった。
「工場を増設するって聞いたけど本当か。金は準備できているのか」と、相当立腹しているようだった。
いや、まだ金の段取りなど何もしていない。図面ができ次第、社長に説明に行くつもりだったと告げると、もう機械を発注したそうではないか、ちゃんと説明に来いと言われて、ガチャンと電話を切られた。
図面のことは、建設部長から聞いたのだろうが、機械の発注は? まだ、増設したいと設備メーカーに言ったばかりなのに……。工場長から回り回って、これまた建設部長から社長の耳に入ったのだろうか。