【前回の記事を読む】借金40億円の会社——「ゼロからじゃない、マイナスからのスタートだ」経営者たちが再建するために取った行動とは…

第1章 債権者集会

債権者集会

「社長のお気持ちは分かりますが、全お得意先を回るなどということはとてもできないでしょう。物理的に無理でしょう。あそこに行ったらしいが、俺のところには来なかった、となると余計ややこしくなりますよ」

「それもそうですね」

そう言いながらも、松葉の気持ちはすっきりしない。が、そうするしか仕方がないか ……。

「社長、ここは時間もありませんので、私が営業部長と一緒になって担当者に1軒、1軒ヒヤリングしてみましょう。引き続きお取引頂くか確認してから、売上額を出すようにしましょうか」

「そうですね。担当者の営業の深耕度によっては他社に代わってしまうところもあるかもしれませんね」

翌日、仙田から報告があった。

「うちの担当していた山下は会社を辞めるそうだな。彼がいないなら、わが社は松葉工業との取引をやめる、と言ったところが2軒ある、とそんな話が出ました」

このお客は、“会社ではなく営業担当者に付いていたお客なんだなぁ”と松葉は寂しさを禁じ得なかったが、そんなことはおくびにも出さず応えた。

「そうですか。しかし、思ったより他社に乗り換えるところが少なくホッとしました。売上額はどうなりましたか」

「相当シビアにしたつもりです。営業部長もこの数字なら毎月クリアーできますと言っていました」

「その売上の利益から再生債務の弁済額を捻出しなければなりませんから……。売上目標達成と返済額確保の両にらみでいかなければならないけど大丈夫かな」

専務が頭を悩ましながら捻り出した売上額に対して、松葉は不安を口に出してしまった。

しかし、仙田は松葉の不安にはお構いなしに断言するように言った。

「再生債務が20%ならいけると思います」

「よし、分かりました。弁護士に80%の債務免除を債権者にお願いすることを私から伝えます。専務、それでは常務も交えて、その売上額を基礎数字に、再生計画を組んでみて下さい」

「分かりました。夕方までにはその作業を終えて、提出します」松葉は、すぐさま今藤弁護士にアポを入れた。