第2章 -ポークジンジャー-

同僚はオレの肩を揉みながら、「すげぇ硬いよ、岩みたいな硬さじゃん、揉む手が折れるかと思うくらいだよ」と心底びっくりした顔で言った。

「銭湯にでも行ってくれば? おれ結構行くんだけど、毎日どんどん健康になっていく気がしてるぜ!」

意外だ、こいつがそんなに銭湯が好きだなんて。「そういえば、常連の宮さんがよく銭湯に行っているってヨシさんが言ってたな」とぼんやり思い出した。その日、早速駅前の銭湯に行ってみた。

ここに来るのはいつぶりだろう。子供の頃にオヤジがたまに連れて行ってくれたことを思い出した。あまり正確な記憶はないが、内装や風呂などはほとんど変わっていないように思えた。意外にも客が多く、お湯のせいだけでなく男たちの熱気を加わり、中は思いのほかムンムンとしていた。

超音波を発生させるためマッサージ効果があるというジェットバスに浸かっていたら、あまりの気持ちよさに意識が遠のきそうになった。10分くらい入っていただろうか、ここに来た理由を思い出し、あわてて浴場の中をキョロキョロと見回した。

割と人も多いし、湯気もある、ここから誰かを探すというのは結構難易度が高いんじゃないかと思った。「早めに外に出て待ち伏せした方が良さそうだな」と心の中で呟きながら身体を洗っていると、横にいた常連らしき宮さんと同じくらいの初老の男性二人の会話が耳に入った。

「そういえば先週宮さんが入院したってな」

「あぁ誰かから聞いたよ、なんで入院したって言ってたかなぁ」

「わからんけど、この歳になるといろいろガタが出てくるからなぁ」

「明日にでも見舞いに行ってみるかね」

「そうだな、病院で暇してるだろうしな、ははは!」

あまりのドンピシャな会話にビックリしてしまった。咄嗟に話しかけていた。

「あのぉ・・・すいません、宮さんってあのいつも茶色の帽子被ってニコニコしている、あの宮さんのことですか?」