夜には近くの広場でナイト・マーケットが開かれていた。キラキラした大音量のローカル・ミュージックが流れ、安いTシャツやワンピース、ジーンズ、ビーチ・サンダル、カセットテープが蛍光灯の下に並べられている。

初めて見る光景であるのになぜか懐かしい。その後、私はある一冊の本に出合った。バック・パッカーのバイブルと言われている沢木耕太郎の『深夜特急』である。

作者はインドのデリー発ロンドン行きの路線バスに乗ろうとしてデリーまで行く予定であったが、運賃の安い香港とバンコクのストップオーバー便に搭乗したため、予想外の展開となった。

香港では当時の香港、マカオの持つ猥雑な魔力にはまり、滞在がどんどん延びてしまった。次に向かったバンコクでも東南アジアの不思議な魅力に憑りつかれ、そこからインドシナ半島のベトナム、マレー半島からシンガポールまで旅をすることになった。

『深夜特急』には一九七〇年代前半の貧しく、怪しく、そして混沌とした東南アジアが描かれており、読者を未知の暗い幻想的な世界に引きずり込む。

私のアジアへのあこがれは一層強くなり、将来いつか東南アジアに旅をしたい、できれば住んでみたいと思うようになった。

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