映画『NAGISA』村上もとか 原作 小沼勝 監督 フィルムシティ 二〇〇〇年

子供から大人へと成長する姿、健気さ、素直さ、気丈さ

平成十二年制作の映画。舞台は昭和三十年~四十年代ころと思われる。稲の絵の百円玉が出てきていた。

主人公なぎさという少女のひと夏の経験を綴ったもの。なぎさは十二歳、小学六年生である。漁師である大好きな父親を亡くし、母親と二人暮らし。母親は居酒屋を経営し、日々愛想を振りまく接客をしている。

なぜ、そんな対応ができるのか子供のなぎさには理解できない。夏休み前の成績表で体育が一つだけ上がった。成績が上がったら欲しいものを買ってやるという約束だったので、レコードプレーヤーを買ってくれと母親にせがむが、母親は体育は勉強ではないと拒否。

なぎさはプレーヤーを買うために、伯母の経営する海の家でアルバイトを始める。最初はなかなか商売上の冗談が言えない。この生真面目で初々しいところが良い。

そんなところへ、伯母の娘が不良と共にスポーツカーで帰ってくる。昔の不良は佇まいだけでレトロである。派手な服装、モンキーダンス、オープンカー。ノスタルジーを感じる映画である。

また、東京へ出ていった同級生のお嬢さんが夏に帰ってくる。ホテルのオーナーでお金持ち。

なぎさの母親とは昔そのホテルで共に働いており、オーナーを巡ってのライバル同士であった。そんなことを背景に、そのお嬢さんの作り話に乗せられてしまうなぎさ。

また、入り江で水泳をしている時に出会った男の子。体が弱く、泳げずに、漂流物を集めていた少年になぎさは水泳を教えてやる。

ある日不良の「おねえさん」に誘われて、パーマをかけ、夜のパーティにいくことになるが、その前に少年に水泳の特訓をしに行く。

しかし、どうしてもその髪型ではその少年に会うことができず、翌日おかっぱ頭に戻してしまう。このあたりも子供から大人への揺れ動く少女の心が感じられる場面だ。

おかっぱ頭にしている間に少年は離れた島までの水泳に挑戦し、溺れて死んでしまう。救急車のサイレンを聞いたなぎさはもしやと思い、いつもの入り江へ行く。途中で神主に会って少年が溺れて助からないのではないかと言われ、気を失ってしまう。

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