第二章 日常を生きぬく事 くじけそうな時は

『花石物語』井上ひさし  文春文庫  一九八三年

主人公に大きな印象を与え、また、アルバイトを紹介してくれた重要人物がいる。となりの家の二階、主人公の住んでいる部屋の向かいの窓の住人、かおりである。

彼女はそこで女郎をしているが、「苦界に身を投じた」というような暗い雰囲気は全く無く、とても明るく振る舞える女性であった。その彼女のために主人公は物語の終わりに、ある決意をするのだった。

物語の大部分は東北弁の会話形式で進んで行く。これがまたいい。記述は標準語だが、東北弁でルビが振ってあるのだ。

最後まで読みとおすと相当東北弁が理解できたような気になるのである。東北弁は難解ではあるが、とても親しみやすく優しい言葉であることがわかる。