第1章 直面する課題の概略~人生100年時代前夜

4.60歳以降の働き方を歴史学的に考える

ドイツの社会学者マックス・ウェーバー氏によれば、官僚制の特徴は、非人格的合理的な規則の体系による支配と権限の原則にもとづく職務思考である。また頂点に立つ少数者に集中し掌握された政策決定権や命令権が、職位、機関を経て末端にまで貫徹する上下階層的な段階組織(ヒエラルキー)であると語っている。

このように官僚制組織は業務の正確さや迅速さなどのため、純粋技術的に見て優秀である。また近代資本主義的な経済取引が行政に対する要求を高度に満たすが故に行政組織はもちろんのこと企業等あらゆる領域で官僚制が主要な支配形式になっている。

しかしながらこの盤石に見える最強の官僚制、企業組織も弱点がないわけではない。一言でいえばマンネリ化である。例えば①規則や権限の順守が自己目的化して、最も能率的であるはずの組織が非能率的な組織に転化②能率の論理に圧殺される人間関係のゆがみ③権力手段としての制度と人間の自由の問題等が懸念材料である。

また常に、いつの時代も、企業、組織体は最も利益の出せる組織を希求する。当然ながら利益の出せる人材を欲する。仕事のできる人を求める。では仕事のできる人とはどのような人物であろうか? それは職務能力と職業能力のバランスが取れている人材になる。

職務能力はスキル、職業能力とは立ち居振る舞い、人間性である。要は、組織に入って、利益が出せ人間関係もうまくやれる人の意味である。

私は仕事のできる人、エンプロイアビリティ(※3)の高い人の表現として、「プレイングマネージャー」というワードが適切と思っている。プレイングはスキルだが、マネージャーは自己マネージメント、自己コントロール、自己制御の出来る人の意である。