第1章 直面する課題の概略~人生100年時代前夜

1.人類が初めて出会った人生100年時代

私は今年で74歳になる。同年代の友人と会うと、お互いに年をとったな、もう若くないなという話になることも少なくない。しかし一方では、人生100年時代だという広告や記事などもよく見かける。

人生はいつまで続くのかは誰にも分からない。人生に必ず終わりがあることも知っている。だからこそこれからの人生をどのように考えて、どう生きるべきかを改めて考えてみたいと思う。

人生100年という期間は果たして長い期間であろうか? この問いに対しては「決して長くはないが短くもない」が回答になろうか。

現在考えられる最も大きなスケール、尺度、それは138億年前に誕生したこの宇宙である。すなわち宇宙的マクロスケールから見ると短い。しかし地球的ミクロスケールから見ると長い。

我々人間(20万年前に誕生したホモサピエンスの末裔)の生存期間を、宇宙的マクロスケールと地球的ミクロスケールと比較してみると下記の如くである。

ホモサピエンス20万年/宇宙138億年=0・0014%

ホモサピエンス20万年/地球46億年=0・0043%

こう見ると、100年時代の話は宇宙的地球的スケールでは、やはりある意味スケールが小さすぎる。

しかし、観点を変えて我々ホモサピエンス20万年の歴史から人生100年時代を見ると決して小さな現象ではなく、人類始まって以来の大きな画期的な時代なのだ。

人生100年時代というエポックメイキングな現象は、我々ホモサピエンスがこの地球上に現れて以来100年の寿命を望める期間はたった0・003%に過ぎない事実の、初の体験者になっていることだ。

この事実、この現象を認識することが人生100年時代の生き方を考える土台、拠り処に成り得る。この土台から発想し考えた暁には人生100年時代の基礎的なおかつ普遍的な新しい生き方、すなわちキャリアインフラが創造できるのではないか。

人生100年時代の新しいキャリアインフラを創る第一の発想転換は、定年退職以前を第1の人生、定年退職後を第2の人生と分けることだ。                                            

第二は第2の人生の生き方を考えることだ。何故なら未知の世界だからだ。人生100年時代の生き方を考えることは第2の人生を徹底的に考えることによって意味あるものになる。

第1の人生を生きている人々も第2の人生を歩んでいる人々(私も含まれる)を見て、人生100年時代の生き方を考えることができるからだ。

論証の根拠は、考えられる現在の最大スケールである論理的な宇宙物理理論だ。138億年のマクロスケール観だ。そうでないと実証性、信憑性がない。