第二章 聖地の風に吹かれて
探していたもの
店の前にラッパ系の管楽器が高さ順にきれいに並べてある。なかなか粋なディスプレイだ。
ガラス越しに店内を見ると、思った以上に様々な楽器が置いてある。青色の看板には、黄色い影付きの赤い文字でKATHMANDU MUSICAL HOUSEと書かれている。
いかにもネパール楽器専門店という風情。中に入ってみると、そこには三つもサーランギーがあった。どれも彫刻が素晴らしく、値段は四五〇〇ルピー。
しかし驚いたことに、どれにも弓が付いていない。私が興味ありそうに見ていると、店主がいきなり演奏を始めた。それもバイオリンの弓で!
おそらく、これも置物なのであろう。専門店でこれなのかと、落胆の色は隠せない。でも、まだ旅は始まったばかり。
気持ちを切り替えて、他の楽器を見ることにした。店内を見渡したところ、たくさんある笛に目が留まった。笛なら軽くて細く、スーツケースにも十分収まりそうだ。手頃な長さの笛を手に取ると、金属が巻かれたり、埋め込まれたりしてきれいに装飾されている。
縦笛かと思って手に取ると、吹き口のところが塞がっており、フルートのような横笛だとわかった。これは面白い。「どんな音?」と言って指さすと、店主が演奏してくれた。
他の笛の音色も次々と紹介するが、決して無理強いをしないという、ネパールでは珍しい接客に心が動いた。横笛と篳篥(ひちりき)のようなリード付きの縦笛の二本を購入することにした。二本だからということで、一〇パーセントのディスカウント!