第二章 聖地の風に吹かれて

初めての友だち

現地で実際に見て気づいたのだが、黄金のストゥーパには、あのブッダの目が四面すべてにあった。写真を見て、正面だけにあるものだと勝手に思い込んでいた。「智恵の目」ともいわれるそのまなざしは、四方いわゆる全世界を見つめているのだ。

ストゥーパの裏のゴンパ(僧院)に行く途中、二人の男の子がゴム紐を絡めて丸くしたものをボールの代わりにし、足で蹴って遊んでいた。彼らは私たちに気づくと「ハロー」と声をかけてきた。そして、いっしょにやろうと身ぶりで誘ってきた。

友人は「待ってました!」とばかりに駆け寄って、いきなり参加。私も加わり、四人でのネパール式蹴鞠(けまり)が始まった。

ところが、蹴ってパスをつなぐのは思いのほか難しく、なかなか続かない。

そこで途中からは、バレーボールに切り替えて手でパスをし合った。ぎりぎりパスをつなげる私たちのぎこちない動きを見て、二人は笑っている。

かなり盛り上がっていたが、こちらの体力が持たずギブアップ。休憩しようというメッセージを伝えるため、その場にしゃがみ込んだ。男の子たちもすぐに察して、私たちの前にちょこんと座った。

話してみると、一三歳と一〇歳の兄弟だった。兄は褐色の肌で、笑うと目尻がきりりと上がる精悍な顔つき。一方、弟はやや色白で目元にも口元にもまだあどけなさが残っている。

ふと思い付き、男の子たちを喜ばせようとリュックサックから飴を取り出した。日本から持ってきたものだ。

「ジャパニーズ・ボンボン、プリーズ」と私が言うと、嬉しそうに受け取り、すぐ口に放り込んだ。「グッド?」と聞くと、うんうんと頷く。私たちも疲れを取るため、飴を口に入れてしばし休憩した。

男の子たちはもう一度やる気満々の様子だったが、こちらは体力を使い果たし、時間も気になっていたので、「写真を撮っていい?」とカメラを向けた。二人はすっと立って肩を組み、飴を持った手を前に出してポーズを取る。