【前回の記事を読む】選ばれし少女はクマリという神になる。肝の据わった少女を選び抜くため、少女は生け贄となる動物の頭部が並べられた暗い部屋へ閉じ込められる。
第三章 暗い心に灯がともる
バザールで復活
クマリの館で痛い目に遭ったからには、せめて買い物でもして気分転換を図ろうということになった。
ひとまずダルバール広場を離れ、インドラチョークへと向かった。そこは、中世の時代から変わらず続くバザールで、道の両側に食材や日用品、衣類などあらゆるものがびっしり並んでいる。庶民と観光客が入り交じり、物売りの声もにぎやかだ。
どの店にも色とりどりの商品が並んでおり、見ているだけで元気が出る。
そんな中で、ビーズの付いたかわいいニット帽を見つけた。ベージュの帽子のてっぺんから何本もの細い三つ編みが垂れ下がり、そこにはカラフルなビーズがいっぱい付いている。日本では見たことのないデザインに心惹かれる。
手袋も日本の一般的なものより、太い毛糸で編まれており、いかにもあったかそうだ。色も模様も異国情緒が漂っている。あれにしようか、これにしようか、二人で見せ合いながら選ぶ。
最終的に私は、ビーズ付きの帽子とチベット柄の手袋を一組購入した。友人は、私がまさかあんな派手な帽子を買うとは思っていなかったらしく、かなり驚いていた。そこで帽子を取り出して実際に被って見せたところ、「あっ、意外と似合ってる」と、にこにこしながらほめてくれた。
続いて、紅茶のお店。「へえ、こんな茶葉なんだ」と友人がつぶやく。見てみると、ネパールの紅茶は日本で見るような茶葉の形状ではなく、数ミリくらいの粒状に丸められている。初めて見る茶葉に驚く。お湯を注いだらどんな風になるのだろう。興味津々だ。
横に目を向けると、鮮やかな赤や緑、紫色のシルク生地のポシェットがたくさん吊ってある。何かと思って手に取ると、中に紅茶が入っている。ファスナー付きのポシェットには肩かけ用のカラフルな紐も付いており、後で十分使えそう。まさにお土産にぴったりだ。
他のお店にも同じようなものがあり、値段は高い店で八〇ルピー、安い店になると五〇ルピー。どちらにしようか行ったり来たりしながら迷っていると、私の前に突然、どこかで見たおじさんの顔が現れた。
あれっ、誰だったっけ。すると、目の前にあのビーズ付きのニット帽。